【番外編】思い出風味、キャベツのお漬物

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「ハルちゃん、依ちゃん!大変やで!」 例のごとく客足が遠のく夕方に、八百屋の瑠美子さんがリスボンへと飛び込んできた。 並んで食器を洗っていた私たちは、お互いに顔を合わせ首を傾げる。 肩で息をする瑠美子さんは、カウンター席にどさりと座り込む。 「はーっ、ひっさしぶりに走ったら適わんわ。ハルちゃんお冷」 「はいはーい、ちょっと待ってや」 洗いたてのコップをタオルで軽く拭いてからハルさんに手渡す。 おおきに、と微笑んだハルさんは慣れた手つきでコップに水を注ぎ瑠美子さんの前に置いた。 それを一気に煽った瑠美子さんは、飲み干すなりプハッと息を吐く。 「『ジュエリー』が75パーセントオフやねん!」 唐突にそう言った瑠美子さん。 私は苦笑いで「え?」と聞き返した。 「瑠美子さん、それほんま?」 「ほんまやほんま!明代さんとこのカネキに用があって言ったら、そんな看板出しとったんよ!」 明代さんの『カネキ』と言うと、瑠美子さんが言う雑貨屋『ジュエリー』のお隣の店舗だ。 ハルさんと瑠美子さんが真剣な顔付きになったので、只事ではないのだと察した。 でも、どうしてジュエリーの商品が75パーセントオフになることが大事になってしまうのだろう?
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