【番外編】思い出風味、キャベツのお漬物

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「あのな、依ちゃん。百円の75パーセントオフ言うたら、25円やろ。それで店儲かると思う?」 瑠美子さんに尋ねられ静かに首を振る。 じゃあ、ジュエリーはなぜ儲からないのにそんな大幅な値下げを決めたのだろう? 悩んでいるうちに、ひとつの答えにたどり着く。 はっと顔を上げると、瑠美子さんは難しい顔で頷いた。 「ジュエリー、店畳むつもりやねん」 重々しいその言葉に、息を呑む。 慌ててハルさんの顔を見ると、とても寂しそうに笑っていた。 「そんな……」 続きの言葉が出てこず、私は顔を顰めた。 ジュエリーの店長である勘吉さんと、その奥さんの富子さんの顔を思い浮かべた。 商店街の人達からの人望も厚く、仲睦まじい老夫婦。 ジュエリーで髪留めを買って、沢山おまけをして貰ったのはまだ記憶に新しい。 その時も、とても良くしてくれた。
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