【番外編】思い出風味、キャベツのお漬物

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翌日。 リスボンへアルバイトに向かう途中、私は少し遠回りをして雑貨屋『ジュエリー』の前まで来た。 店頭に出ているワゴンには、赤いペンで75パーセントオフの文字が書かれた紙が貼っていた。 「あら~、リスボンの依ちゃん。こんにちは」 店の奥でパイプ椅子に腰掛け、お茶を飲んでいた女性に声をかけられた。 背中を丸めた小柄な体型、灰色の髪をてっぺんでお団子にまとめた可愛らしいこのおばあさんは、ジュエリーの富子さんだ。 「こんにちは、富子さん」 「はい、こんにちは。ちょうど良かった、ちょっと来てくれへん?」 にこにこと笑う富子さんに手招きをされ、自転車を邪魔にならない場所へ寄せて店の中に入った。 髪ゴムや髪留め、イヤリングにネックレス。 キラキラ輝く小物が沢山並べられた店内とあの張り紙を見比べて、私はきゅっと眉を寄せた。
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