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星一つないどんよりと曇った空、分厚い雲の奥で月が鈍い光を放つ。
風が吹き隣のブランコの摩擦部分がキィ、キィと擦れる高い音が鳴った。
冷たい風が吹き抜け、頬を突き刺す。
ぼんやりと空を見上げて、鼻をすする。
ブランコの鉄の持ち手部分から伝わる氷のような冷たさを感じ肩を震わせると、止まったはずの涙がまた溢れ出した。
頬に流れる熱いものも、すぐに外の冷たい風に吹かれて乾く。
嗚咽を漏らすまいとかんだ唇は、少し血が滲んで鉄の味が広がった。
かさりと足首に何かが当たる感触がして、ゆっくりと顔をしたへ向けると、ポタリとスカートに涙が二粒落ちる。
足元に無造作に置いていた買い物袋を蹴飛ばしたらしく、買ったばかりの牛乳と食パンが袋から飛び出て倒れていた。
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