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良かった。
携帯が壊れたのかと思った。
汗ばんだ手でスマホを握り締めるも、こんな状況で携帯が壊れることを心配する自分が「冷静」とは程遠いような気がしていた。
私――――寝てる?
まず思いついたのはそれだった。
夢だとしか思えない。
実習にレポート、バイトに追われて万年寝不足。
しかも自分らしくもなく、校舎の階段を駆け上がってしまったのだ。
教室に着いた途端、尋常じゃない眠気に襲われても不思議じゃなかった。
――――というかそれしかない。
それしか説明がつかなかったのだ。
起動画面に意識を集中させる。
周囲を見渡すのが怖かった。
夢にしては乾いた風も、ギラギラと焼ける大地もリアルに肌で感じた。
スマホを食い入るように見つめてはいるものの、そのスマホの向こう側に、教室にあるツルツルの大理石調の床材ではなく、赤茶けた泥がチラついていることに気付かないふりをした。
――――たぶん夢だから。
マリカに電話して、話せば落ち着くはず。
夢の中で・・・・・・起こしてもらうのよ。
そんな素っ頓狂な事を考えていた。
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