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ピンクのスニーカーは南の地平線を目指して大地を蹴った。
背後で馬の嘶きが聞こえる。
大地が揺れている。
男たちの声が聞こえてきた。ユキの全身が汗まみれで背中に悪寒が走った。
追いつかれちゃダメだ。
恐怖で涙が出てきた。
滲んだ視界で地平線が揺れた。
その瞬間ユキは足元の石に躓き勢いよく転げてしまった。
近くで馬の蹄の音がした。ブルンと息を吐き出している。しこたま打ち付けた足の痛みも忘れ涙目で顔を上げた。
茶色い毛並みの馬が三頭、ユキを見下ろしていた。その馬に跨ったまま男達は話している。
「おいおいおい。誰だよ。ガイゼル(大きなイタチのような草食動物)だって言ったやつ。やっぱ来てみてよかったじゃねえか。こんなところで若い女にありつけるなんてよ」
そういうと全身黒づくめの男たちが馬からゆっくりと下りて近づいてきた。
ユキの全身が総毛立った。
とにかくここから逃げ出したかった。
震える手でギュッとリュックの紐を握り締めた。その時「カツッ」とプラスチックがリュックの金具に当たる音がした。
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