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「もう夕飯できてるよ。今夜はさ、女子らしく、エビとトマトの冷製パスタにしてみました」
真理香は夕食のメニュー公開で雪を励ました。
「何? 凄い! おしゃれカフェメニューじゃん」
雪が感嘆の声を上げる。
「十分もあれば着くと思うから!」
雪の声にみるみる生気が溢れ、真理香が電話口で笑った。
雪は真理香のおかげで強い目標を持つと、廊下へ続くドアへと手を伸ばした。
ギギ……ガチャリ。
古いドアは重く、少し軋んだ音を出してスルッと開いた。
一瞬光がまっすぐに差し込みユキは目を瞑った。風がヒョオッとユキの黒く長い髪を巻き上げた。
「あっ! それとさ――」
マリカの声はそこで途切れた。
目を瞑ったユキは、
「何? 何て言った?」
一瞬吹いた風で聞きとれなかった言葉をマリカに問いかけながら目を開けた。
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