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あまりの明るさに目がくらんだ。
「うわっ…………!」
恐る恐る目を開けると、そこにはカビ臭く、暗くて進むのも億劫になる、あの狭い廊下は無かった。
今まで見た事のない突き抜けるようなコバルトブルーの空と、強烈な太陽の降り注ぐ、赤茶けた大地が広がっていた。
ユキは今出てきた教室を探して思いっきり振り返る。
見ていたはずの物は何一つ見当たらない。
全てが忽然と消えさり、ただ赤い土だけがユキの目で捉えられなくなるまでどこまでも伸びているだけだ。
「ふぇ?」
間抜けな声を出してユキはようやく電話口のマリカの存在を思い出した。
「ここ……どこ? あれ? もしもし? マリカ? 聞こえてる? マリカ!」
電話の先に居るはずの親友は応えない。
スマホの画面を見ると真っ暗な画面が太陽を反射し、かろうじて自分の顔が映っているのが見えた。
何度もタップしながらようやく気付いた。
電源が落ちているんだ。
「とりあえず落ち着け、落ち着け」
自分の頭に言い聞かせながら、スマホのサイドについているボタンを長く押しつづけた。
画面は再び光を放ち始め、企業ロゴがキラキラと舞い始めた。
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