第二章 ブルーベリーモンスター 

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       *  放課後、天文部の部室に行くと、中央の机の上に三、四十センチのゲージが置かれていた。ふわっと、草の香りと動物の匂いが漂ってくる。  入谷が陶器の餌入れに、袋からひまわりの種をじゃらじゃらと移していく。生物の世話を好んでするようなタイプには見えず、意外に感じながら、僕は椅子を引き、腰掛けた。 「ジャンガリアンハムスターよ」 「ハムスターなんていたのか」 「今日は当番なの。生物部が飼ってたんだけど今年は部員がいないから、天文部の私も世話を手伝ってるのよ」 「そう言えば、入谷は星が好きなのか?」  入谷が不思議そうな顔をして、僕を見た。 「好きな星は月よ」  その答えは通なものなのか、それともさほど興味がないだけなのか判断しづらい。 「帰りが遅くなっても、天文部で活動してるって言えるし便利でしょ? だからよ」 「なるほど」  荷物を置いて、入谷のそばに行く。ペットを飼った経験がなく、ハムスターはペットショップやテレビでしか見たことがない。少しわくわくしながら、そっと覗き込む。そこには、毛玉のような生き物がいた。     
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