第二章 ブルーベリーモンスター 

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 席に戻りながら訊ねてみると、ビシャスの世話を終えた入谷は、「小学二年」と答え、席に着いた。小さい頃から、その能力があったわけか。一見便利そうな能力ではある。例えば、分かれ道があり、こっちの道に行くと嫌なことがあるぞ、ということがわかるわけだ。自分の身に降りかかる災いを回避できるのなら、とてもいい能力に思えるが、今朝の入谷の様子を見ると、どうもラッキーの一言で済ますことはできそうもない。 「それは、大変だったな」  不機嫌そうな入谷に声をかける。顔を上げて僕を見ると、「まぁ、慣れたわよ」と浮かない顔で小さく笑った。 「森須、殺人事件があったわ」 「さっき聞いたよ」 「おとりにしましょ」 「誰を? まさか、犯人をか!?」  入谷は僕をフリーズさせる天才だ。何を言っているのか、何を考えているのか、理解できない。彼女の思いつきで、僕の思考は停止し、再起動に時間がかかる。頭を抑え、入谷に確かめる。 「まず、犯人を見つけましょ。殺人犯だったら、いずれレッドと鉢合わせになるわ」 「レッドを見つけて、どうするんだ? 初めましてと挨拶でもするのか?」 「油断してるところを、殴る」  まだ少ししか入谷のことを知らないが、入谷が軽口や冗談で言っているのではない、ということはわかる。この前は、嫌な予感のする場所で待ち伏せをしようと話していたが、確かに、殺人犯をおとりにした方が、レッドへ到達できる可能性は高い気がする。 「犯人は、私の予感能力を使って探すわ。嫌な感じがする方へ進んでいけば、そこで事件が起きるはずよ」 「そんなダウジングみたいな」 「ダウジングよりも正確よ。で、そこから先が、あんたの出番」     
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