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掴んでいた入谷の手首を話す。入谷は狭い部室の中を、ウキウキとした足取りでステップを踏みながら、落下した物を拾いに行った。僕は、顔を手で撫ぜながら、どう誤魔化すかを考える。だが、たった今披露してしまったし、入谷には見つかっている。白を切るよりも、話す方が得策だろうか。
「グラフィティを始めたばかりの頃に、警察官に声をかけられたんだ。現行犯だった。声をかけられた瞬間に、あぁもう自分の人生は終わった、と思ったよ。落伍者としてのレッテルが貼られて、少年院に入れられるんだろうなとか」
前の席に、入谷が戻った。その手には、黒い塊が握られている。
「なんなんだ、それは」
「スタンガン」バチバチ、という重く大きな音が響き、青い光がクワガタの角のように分かれている先端の間を流れる。
「それを、今、僕に向けたのか!?」
「そうよ、ちょっと改造したから百万ボルトはあるわね」
「百万ボルトなんて、ゲームの技でしか聞いたことがない。僕を殺す気か!?」
「殺さないわよ、気を失うくらいには調整してるつもり。まぁ、電圧が強ければいいってものでもないんだけどね。話の腰を折って悪かったわ。続けて」
殺されかけたのに、無神経にお喋りなんてできるか、と思ったが、「男のくせにガタガタうるさいわね、気絶するだけだって」とでも返されるのだろう。ため息を吐き、続ける。
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