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入谷は、肩にかけていた少し大きなショルダーバッグから、折りたたんでいた先ほどの青い腕を取り出し、おもむろに僕へと差し出してくる。「おい、僕にこれを着けろって言うのか?」
「わかってるなら訊かないでよ」
「入谷に手を貸すとは言ったけど、右腕をまるっと貸すとは」
そう言いながら、恐る恐る受け取る。かなり重いのではないか、と身構えたが、思ったほどではなかった。入谷が、青い腕の上腕と前腕の側面をいじると、ぱかっと竹が割れるように開いた。先にグローブに右手をはめ、ワイシャツの袖を肩まで捲り上げ、前腕、上腕の順に中へ入れていく。
入谷が開いていた腕を閉じ、両サイドでパチリと腕を止めた。中には少し遊びがあり、それほどジャストサイズでもない気がする。
次に、入谷は青い腕の肩口にあった十五センチほどの五角形をした塊から、太いベルトを伸ばした。まるでシートベルトのように左の脇腹を経由し、右肩へと一周する。ベルトには脇腹で固定する為のサポーターがついており、簡単にズレそうもない。
青い腕が固定され、自分がなんだかロボットの一部になっていくような不安を覚える。
「サイズはちょうどいいわね」
だが、入谷の声は楽しげだ。僕は完全に、入谷を止めるタイミングを失ってしまった。
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