第二章 ブルーベリーモンスター 

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「トルクってなんだ?」 「ニュートン×メートルよ」入谷が何を言ってるのか全然わからない。 「まあ、放電と腕力増強の機械だって思っておけばいいわ。それよりダイヤルをゼロにしてちょうだい」  これ以上説明を求めて、細かいメカニズムの話をされても理解できる気がしなかった。それでも何かを言わなければと口をぱくぱくさせていたら、入谷はさっと身を翻し、生まれた道を進み始めた。  僕は一度深呼吸をしてから手首のダイヤルを0に戻し、黙って入谷に続いた。こんな機械、女子高生が簡単に扱えるものではないはずだ。そんなものを、入谷に預けようと思った人の意図もわからない。材料不足だ。何のアイデアも浮かばない。  少し進むと、展望台があった。屋根があり、下にテーブルやベンチが並んでいる。入谷は黙ってベンチに腰掛けた。何も言ってこないが、黙って僕だけ立っているのも変なので隣に座る。  ベンチに座ると、町が一望できた。光の粒が集まり、キラキラと月光を反射する水面のように輝いている。その光の一粒一粒は、人の生活であり、そこでは人が生きている。なんだか、その光がえらく遠くにあるように感じる。映画のスクリーンの中のような、対岸にあるような感覚だ。     
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