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「こんな町、なくなっちゃえばいいのに」
「え?」
「なんでもないわ」
入谷が物憂げな顔で町を眺めている。町の景色を見ているようで、見ていない。その瞳は何を写しているのだろうか。記憶なのか、思い出なのか、入谷はまた、ここではないどこか遠くに思いを馳せているようだった。
右腕に装着された青い腕を撫ぜ、口を開く。
「ブルースドライバーは誰が、何の為に作ったんだ?」
「私の姉よ。天才で、みんなの中心だった。綺麗で頭がよくて、ずっと憧れてたわ。ロボット工学を専攻してて、それは未完成だけど、災害時に活躍できるパワーアシストスーツとして作ってたものの一部よ」
「これが、災害時にねぇ」
瓦礫を壊す作業なんかに使えるのだろうか。岩を砕くことは、証明できた。
「入谷のお姉さんは、今はどこにいるんだ?」
この前、お邪魔した時にはいなかった。入谷の姉、とは実の姉なのか、それともあの施設にいた年上の女性なのかも僕にはわからない。
「死んだわ」
「え?」
「昔、殺されたのよ。殺人犯の人質にされて、そのまま犯人ごとトラックに跳ねられた」
つい最近、その話をどこかで聞いた。
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