第二章 ブルーベリーモンスター 

25/59
前へ
/239ページ
次へ
 図書室で、糸魚川がネットの情報はあてにならない、と僕に教えてくれたエピソードだったと思い出し、あの話を僕にわざわざしたのは、これが理由かと思い至る。  入谷は自分の大切な人を、人の黒い感情の集合体によって殺されたのだ。なんと言葉をかけていいのかわからず、「そうか」とだけ呟いた。 「レッドが気に食わない理由の一つが、あの強さ。超人的な人間の能力なのか、それとも機械によるものなのかはわからないけど、私にはそれが気に食わないのよ」 「どうしてだ? ヒーローがいれば、助かる人も増えるんじゃないか?」  入谷が僕に視線を向け、ひどく弱々しく笑った。 「私にレッドと同じ力があれば、お姉ちゃんを助けることができた。そう思うのよ」  入谷の感情を押し殺した声を聴き、胸が詰まる。  風は吹いていないのに、なんだか急に肌寒さを覚えた。 「森須は、ヒーローなんて必要だと思う?」     
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加