第二章 ブルーベリーモンスター 

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「レッドが出て来て、みんなが喜んでる。平和はレッドが守ってくれてるっていう雰囲気が、町を覆い始めてるのわかるでしょ? そんな中で、個人的な感情であいつを殴ろうって言って協力してくれる人は、いないわ」 「まあ、いないだろうな」 「あと最後に、見ちゃったからね」 「僕が器物破損してるところを、か?」  自嘲的に笑い、あれは手痛い失敗だった、と古傷を懐かしむ。 「違うわよ。森須がバイクのひき逃げ犯を捕まえるレッドを見てるのを、見たの」 「あぁ、あれには驚いた。初めてレッドを見たんだ」 「あんたすごい目をしてたわよ。獣みたいに、敵意むき出しの目をしてた」  指を向け、まさしく指摘された。その指の先端で、僕の心の奥を突かれている気分だ。 「そんな顔をしてたか?」 「勝手に、こいつなら仲間になってくれる、って思った」 「本当に勝手だな」 「ダイヤルⅠで殴れば、きっとレッドだって気を失うわ」 「もし、僕らがレッドに勝った、なんてことが町の人たちに知られたら、きっとみんな失望する。正義の象徴が揺らぐわけだからな。希望の光が消えることになる。それでも、レッドを殴るのか?」  喜多村はレッドの映画で苺原を元気にしたいと言っていた。柿崎はレッドに影響を受け、人を守れる人間になりたいと言っている。レッドによって、そういう思いを持った人は他にもいるだろうし、そういう人は今後もっと増えるはずだ。     
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