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柿崎と喜多村と、映画研究部の部室にいる。昼食を購買に買いに行ったところを、喜多村に捕まった。昼ごパンをあげるから来てと言われ、僕らはそれならばと部室へ向かったのだ。
撮影した分の編集が終わったから、観て欲しいのだという。編集作業の大変さ、というのはなんとなくわかった。パソコンに取り込んだ映像を、ソフトを使ってパソコンで編集しているようだが、デジタルだから楽、というわけでは全然なさそうだった。唸りながら目を細めて画面に顔を近づけ、映像の微調整をしている。なんだか職人のようだ。
「なんだか教室とは別人みたいだ」
「マイケル・ムーアが降りて来てるのよ!」
「マイケル・ムーアは生きてるよ」
「マイケル・ムーアの生き霊が降りて来てるのよ!」
せっせと、ケーブルでパソコンとテレビで結んで行く喜多村を見ながら、マイケル・ムーアの生き霊は、なんだかしつこそうだなあと想像する。
「もし、この世に映画がなかったら、喜多村は放課後何をして過ごしてたんだろうなって俺はたまに思うよ」
「そうしたら、映画を初めて作った人間になれたのになあ」
強気だなあと苦笑していたら、柿崎が「そう言えば」と口を開いた。
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