第二章 ブルーベリーモンスター 

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「森須、お前が初めてだよ、あそこまで仲良くなってるのは」 「ん?」なんのことだ、と考えを巡らす。「どうした、突然」 「朝は、何だろうって思ったけど、なるほど、そういうわけか」 「どういうわけだ?」 「朝話してた、ペットショップのことだよ」 「えっ? 森須ペット飼うの?」と喜多村が興味を持った様子で振り返り、目をきらきらとさせて高い声をあげた。犬? 猫? 鳥? と銃弾を浴びせるように畳み掛けてくる。飛んでくる言葉を弾こうとするように、両手を前へ突き出し、「何の話だよ」と柿崎にもう一度強く訊ねた。ペットなんて飼わないぞ、と。 「入谷さんだよ、入谷緑」  入谷が新しく何かを飼うのか? と首を傾げる。柿崎は、僕の反応に困惑とじれったさを感じたらしく、「だから」と強く声を出してから、明瞭な口調で「入谷さんと仲良くなったな」と言った。喜多村だけが取り残された様子で、え、どういうこと? と視線を僕と柿崎の間で行ったり来たりさせている。 「そんなに仲良くはない」 「俺は後ろの方の席だから、見えるんだよ。今日は何だか、メモのやり取りをしてたじゃないか」  トランプで、とっておきのカードを出すように、どうだ! と柿崎が僕を見据える。     
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