第二章 ブルーベリーモンスター 

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「あれは」と口にしながら、言い淀む。別に女子生徒と交流があることに、小学生の時のような気恥ずかしさは感じていないが、やり取りしたメモの内容が物騒なことだったので、どう説明をしたものか、と言葉を探す。間が伸びれば伸びるほど、柿崎や喜多村が勝手なイメージを膨らませてしまうだろうと、慌てて返事をした。 「勉強を教わっていただけだよ」 「そうなの? なんだ、そんなことか」くらいの反応が返ってくると思ったのだが、「そうなの!?」と、こちらが驚くほど、喜多村が驚きの声をあげた。 「そうだけど?」 「すごいな、森須は」と柿崎が声をもらす。 「すごいのか?」 「すごいよ、森須は」と喜多村が感心した。 「そんなにか?」二人が妙に興奮した様子なので、気圧されてしまう。椅子ごと倒れそうになるのを、足で踏ん張り、堪える。 「入谷さんとそういうコミュニケーションを取ってる奴って見たこと無いぜ。担任の水野だって、会話のキャッチボールができねえって悩んでたみたいだ」  担任の水野は体育教師で、豪放磊落とは彼の為にあるのではないか、と思えるような人物だ。転校して間もなくの頃、水野が校内を案内してくれる筈だったのに、「すまん、俺これからサッカー部があっから」と言って、その役割を放棄して自分はグラウンドに向かってしまった。同級生かよ、と当初は戸惑ったが、どうやら生徒たちは「仕方ねえよ、水野だし」と諦観しており、僕もその考えに同意するようになった。     
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