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しかしその本質は残酷さにあるという。
「残酷さ?」
「簡単に言えば敗者へのペナルティがヤバイのさ」
「…例えばどんな」
「そうだなあ」遠藤はちょっと考え込んで
「まずこのゲーム。プレイヤーごとにポイントが与えられててな」
「ふむ」
「勝てばよりポイントが多く得られる。そのポイントは通貨としても使えて、現実の商品と交換できる」
それだけならそれほど珍しいシステムでもない。
むしろ順当なソーシャルゲームだ。
「それのどこが?」
「だから敗者がさ…例えば、リーグごとに対戦するんだけどな、上位リーグによってはそれまでのポイント全没収されることも珍しくない」
「は?」
「そんで敗者のプレイの晒しあげも行われる」
「公式が?」
「そう、公式が」
遠藤はこくんとうなずいて
「このゲーム、敗者に対してこれ以上ないほどキビシーんだよ。嗜虐心を煽るような設計になっているというか…」
「そんなのが人気なのか?」
「性格の悪いやつが多いんだな」
遠藤はひとりで納得している様子だった。
悟はまだ怒り冷めやらぬ様子の一ノ瀬と斉木をちらりとみやって
「じゃあ、あいつらが喧嘩してるのは?」
「新システムのせいだ」
「新システム?」
「ああ。昨日導入された。まさしくゲームタイトルを現しているシステムだ」
「タイトルって…」
「ジャバリング・デッド」
「口さがない死者…」
それを体現するとはどういう意味だ?
遠藤「ちょっと待ってろ」と言って何やらごそごそやっていたが、やがてスマホを取り出してくると
「実際にやった方が早い」
そして彼はデフォルメされたドクロが蠢くタイトル画面を見せつけてきた。
「これな」
「これが?」
「そう。今新システムにアクセスするから」
そしてまたしばらく画面に向かって打ち込んでいたあと
「ほれ」
遠藤は悟を呼び寄せ、画面を見ることを促す。
悟は立ち上がり、しぶしぶそちらに動いた。
どこかデフォルトみたような横スクロールの、あまりに陳腐なバトルが流れる。
「オラっ!…このっ!…くそ!」
遠藤のプレイはお世辞にも上手いとはいえず、ちょっとした赤色の光を出しただけで、後は相手の紫色のドクロに一方的にやられてしまった。
『ゆーあルーズ』
馬鹿にしたような、ドクロで縁取られたフォントがおどる。
「弱っ」
「馬鹿、わざとだよ」
疑わしいが、敗者へのペナルティを見るには負けてみる必要がある。
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