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「ほらっ」 遠藤の肩ごしにのぞきこんでいた悟は、次の瞬間に思わず目を疑った。 『ペナルティ ●柳悟はタンショウ包○野郎で????』 「…遠藤」 「ほらな」 「なにこれ?」 「俺のお前に対する悪口」 悟は一発殴る許可が欲しかった。 「まあまあ。これはあくまでサンプルだから」 遠藤は悟の表情に現れた憤怒を機敏に読み取り 「でもこれでわかったろ?」 「わかるかっ!!」 「えーと、つまりさ」 『ジャバリング・デッド』に導入された新システム。 それは敗者に「喋る」ことを強制するものだった。 「喋る?」 「この文章だけどな」 遠藤はスマホを振って示すと 「俺が新システムに参加するに当たって、予め書いて、運営に送っといたものなんだ」 つまりこういうことだ。 『ジャバリング・デッド』に新設された超上位リーグ。 それに参加するには、まずプレイヤーはある個人への悪口を書くことを強制される。 その誹謗中傷を運営に了承されれば後は同じ。 参加者はデフォルメされたドクロを操って戦うことになる。 ただし、負けたら失われるのはポイントではなく… 「その人間があらかじめ書き連ねていた悪口が晒されるんだ。ネット上に即座に拡散される」 それが敗者に対するペナルティ。 『口さがない死者』にさせられるペナルティだ。 嗜虐心を煽り、リスクをかける戦いとしてはこれ以上ないシステムだろう。 負ければ待っているのは自分絡みの炎上である。 「じゃあ、一ノ瀬と斉木が喧嘩しているのも…」 「どちらかがゲームのプレイヤーで、敗北したから誹謗中傷が流失したんだろうな」 互いを信じられないようなものを見るあいつらがこれで理解できた。 だが… 「そんなもの、適当な悪口を書いて参加すればいいんじゃないのか?」 悟の尤もな疑問に 「これが強制のデスゲームならさ、それもありだろうけど」 遠藤は首をふる。 「これはあくまでどこまでいってもゲームであることがポイントなんだ。これは自由参加なんだよ。ゲームってのは楽しむためにやるものだろ?」 「だから…か」 「そう。だから参加者は、ガチの、漏れたらアウトな個人への誹謗を書き連ねて、リスクを得るんだ。その方が楽しいから」 そのリスクを取った結果が、今の上位種二人ということである。 悟はしかし納得がいかないようで 「それにしたって…そもそもこんなもの国が許すはずがない」
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