第一章 異世界に呼ばれて

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 フードは垂らしているが、鋭い目つきで、白髪交じりの渋い感じだった。 「この者を乱暴に扱ってはいかん。この者は我ら魔導士が異世界より招き寄せた者なれば」 「これは大魔導士様」  いかつい男たちは龍介から手を放して、うやうやしく跪く。 「大魔導士様?」 「図が高い」  頭を押さえられるが、大魔導士と呼ばれた初老の男は「よい」と言って制す。 「儀式を執り行っておる魔導士の幕舎に呼び寄せるはずだったが、あらぬところに来てしまったか。わしもまだまだ修行が足らぬ」 「いえ、我らの力では我らの世界に招き寄せることもかないませぬ」 「世辞はよい。……源田龍介君」 「え、は、はい!」  名前を呼ばれて龍介はあせった。なぜこの男は名前を知っているのだろうか。  しかも、大魔導士? 今更ながら、龍介は大魔導士と呼ばれた男の後ろに、同じ格好をした男たちが控えているのに気付いた。 「私の名はガルドネ。怖い思いをさせてすまなかったね」 「い、いえ……」  大魔導士、ガルドネは優しそうな目で龍介を見つめ。パニックになっていたのがやわらいで、落ち着いた。 「大王がお待ちだ。一緒に来てもらおう」 「だいおう……?」 (ってゆーか、言葉が通じている!)  見れば明らかに人種が違う。見れば黒人もいる。これでは言語がばらばらで、会話に苦労しそうなものだし。龍介とも話などできるわけはないと思うが。 「魔法が開発されて一千年。魔法により言語の障壁は取り除かれた」 「ま、魔法……」 「いや、深く考えなくてもよい。私を信用してくれ。悪いようにはせぬ」 「は、はい」  あれこれ余計なことは考えず、大魔導士・ガルドネのあとをついてゆくしかなかった。  龍介は固唾を飲んで周囲を見渡すが、やはりどこかものものしい雰囲気で、 「ダレイオス戦記もこんな感じだったな」  などと、見たことあるファンタジーアニメを思い浮かべてぽそりとつぶやいた。  主人公ダレイオスが苦難を乗り越え、伝説の大王・ジャムシードの杯(さかずき)を得て、晴れて大王になるシーンは感動ものであった。  ともあれ、ここはまるで戦場の陣地だ。いや陣地そのものだ。  やがてひときわ大きな幕舎に導かれて。兵士が入り口をめくり上げて開けて、 「どうぞ」  と、うやうやしく一礼をし。ガルドネはうむとうなずき、龍介もうながされて、一緒に幕舎に入ってゆく。
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