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フードは垂らしているが、鋭い目つきで、白髪交じりの渋い感じだった。
「この者を乱暴に扱ってはいかん。この者は我ら魔導士が異世界より招き寄せた者なれば」
「これは大魔導士様」
いかつい男たちは龍介から手を放して、うやうやしく跪く。
「大魔導士様?」
「図が高い」
頭を押さえられるが、大魔導士と呼ばれた初老の男は「よい」と言って制す。
「儀式を執り行っておる魔導士の幕舎に呼び寄せるはずだったが、あらぬところに来てしまったか。わしもまだまだ修行が足らぬ」
「いえ、我らの力では我らの世界に招き寄せることもかないませぬ」
「世辞はよい。……源田龍介君」
「え、は、はい!」
名前を呼ばれて龍介はあせった。なぜこの男は名前を知っているのだろうか。
しかも、大魔導士? 今更ながら、龍介は大魔導士と呼ばれた男の後ろに、同じ格好をした男たちが控えているのに気付いた。
「私の名はガルドネ。怖い思いをさせてすまなかったね」
「い、いえ……」
大魔導士、ガルドネは優しそうな目で龍介を見つめ。パニックになっていたのがやわらいで、落ち着いた。
「大王がお待ちだ。一緒に来てもらおう」
「だいおう……?」
(ってゆーか、言葉が通じている!)
見れば明らかに人種が違う。見れば黒人もいる。これでは言語がばらばらで、会話に苦労しそうなものだし。龍介とも話などできるわけはないと思うが。
「魔法が開発されて一千年。魔法により言語の障壁は取り除かれた」
「ま、魔法……」
「いや、深く考えなくてもよい。私を信用してくれ。悪いようにはせぬ」
「は、はい」
あれこれ余計なことは考えず、大魔導士・ガルドネのあとをついてゆくしかなかった。
龍介は固唾を飲んで周囲を見渡すが、やはりどこかものものしい雰囲気で、
「ダレイオス戦記もこんな感じだったな」
などと、見たことあるファンタジーアニメを思い浮かべてぽそりとつぶやいた。
主人公ダレイオスが苦難を乗り越え、伝説の大王・ジャムシードの杯(さかずき)を得て、晴れて大王になるシーンは感動ものであった。
ともあれ、ここはまるで戦場の陣地だ。いや陣地そのものだ。
やがてひときわ大きな幕舎に導かれて。兵士が入り口をめくり上げて開けて、
「どうぞ」
と、うやうやしく一礼をし。ガルドネはうむとうなずき、龍介もうながされて、一緒に幕舎に入ってゆく。
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