7人が本棚に入れています
本棚に追加
ともあれ、そういう風にして人にも恵まれて、彼女がいないことを除けばリア充さながらに龍介は頑張っている。
頑張れていた。
そんな夢を追う日々から、突然吹っ飛ばされる事態が起こった――。
ある日のことだった。
午前の練習を終えて一旦アパートに帰って、シャワーを浴びて。昼食をとってから自転車で通勤している時だった。
晴れていたのが、突然東の空から分厚い雲が空を覆い。さらに雷まで鳴り。道ゆく人々は空を見上げた。
「あれ、天気予報は晴れだったのに」
ゲリラ豪雨か。雨合羽はない。雨に降られちゃたまらんと、龍介はペースを上げてスポーツ用品店に急いだ。
という時、世界覆おうかというほどの稲光が光ったと同時に。
何か地を揺らすほどの雷鳴が轟いて。思わず身がすくみペダルをこぐ勢いもそがれる。
道ゆく人々も驚き、連れのいる人たちは互いの顔を見合わせながら苦笑し「びっくりしたね」と言う。
「うわー。こんな雷鳴ったら、試合一発中断だなあ~」
サッカーの試合は雨が降っても雪が降ってもおこなわれるが、雷が鳴ったら落雷の危険があるために一時中断して様子を見て、どうしても鳴りやまない場合は中止し別の日にやり直しの試合をする。
龍介も何度か経験があるから、雷を聞くとどうしてもぎくっとしてしまう。
と思えば、また稲光がして、どでかいハンマーでも叩き落されたような雷鳴が轟いた。
「うわー」
龍介の全身に強い衝撃が走った。落雷に直撃されたか!
一瞬にして目の前が真っ白になったかと思うと。電源を切ったようにぷっつりと視界が真っ暗になった。
どでかいハンマーを叩きつけるような雷が鳴り終わったが。
龍介の自転車がぽつねんと倒れて、道ゆく人々は不審げにそれを眺めながら通り過ぎてゆく。
龍介の姿はなかった。
どこに行ってしまったのだろうか?
「起きろ!」
「うーん、あと5分」
「何を言っているんだ?」
「わからん」
「そんなことはどうでもいい、とにかくこいつを起こせ」
「はい。……起きろ、おい、起きろ!」
朦朧とする意識の中で、そんな声が聞こえるが。身体が動かせない。
最初のコメントを投稿しよう!