帰り道

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 そんなある日の朝、その習慣に異変が起きた。バス停に行く途中で、そいつに遭遇してしまったのだ。  顔と頭はふさふさした茶色い毛で覆われ、頭に奇妙に先の曲がった青いとんがり帽をかぶっている。目や口らしきものは見えないが、口と思しき位置に笛の吹口を構えている。身体は、鮮やかな緑のスーツを着ている。服装の奇妙さに違わず、その立ち姿も奇妙だった。膝を曲げ、腰を反らし、2本の笛の先を下ろしたり上げたりと、ヌルヌルとポージングをしている。普通だったら不審者扱いで通報してもよさそうだが、夜勤明けの体は言うことをきかず、ただボンヤリ立ちつくすしかできなかった。 「お前…屋上に立ってた?」 「やはり見ていたのだね、私のことを」  当然だが表情が全く読めない。声は音量がなくても良く響くが、わざとらしいセリフ調の話し方だった。 「てかさっき、なんて言った?」  俺は身構える。 「君はまさに、まわし車で走り続けるハツカネズミ」  一瞬、頭の中でピーンポーンと号令音が響く。ハツカネズミは、俺の仕様もない妄想だ。 「なんで、ハツカネズミって」 「そんなことより、君もあそこへ行ってみないか」  俺の問いを無視してその笛の開口部を向けられた瞬間、またもや号令音が響く。 ピーンポーン。  目の前が真っ白になり、すぐ黒になった。
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