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誰でも気軽に簡単になんて、絶対ウソだ。
だって私はこんなにも、手の中にある画面を見つめたまま、タップできないでいる。
ポンッと指先で画面をつつけばいい。それだけで、つながれる。
そこだけを切り取れば、たしかに“誰でも気軽に簡単に”だろう。だけど、そうじゃない。
この画面の先には――画面に流れ落ちていく言葉の数々の向こうには、それを発信している誰かがいる。そう、この向こうには“人”がいる。
押せばいい。簡単じゃない。ポンッと指を置くだけ。この、フォローってところを叩くだけ。そうしたら、つながれる。
とても簡単なこと。誰だってできる。赤ちゃんだってできる。前に「飼い猫が勝手に」と言っている人がいたから、猫だってできることだ。
それなのに、私はできない。
「ああー」
声に出して、自分のふがいなさを呪う。気分転換しようと思って席を立った。
部屋を出てリビングに行くと、両親がバラエティ番組をながめていた。おかあさんはクスクス笑いながら。おとうさんはまったく面白くもなさそうに、タバコをふかしながら。
私が背後を通っても、気にする様子はない。声をかけられたとしても、ろくでもないことしか言われないはずだから、それでいい。――宿題は終わったのかとか、言われるだけだから。
冷蔵庫を開けて、炭酸飲料に手を伸ばす。直前で思いとどまって、麦茶に変えた。遅い時間に炭酸飲料を飲むと、すごいカロリー摂取になって太ってしまう。ダイエットをしているわけではないけれど、いまの体型より太るのはいやだ。
スタイルがいいわけではない。悪いわけでもない。ものすごく平均的な身長で、とてつもなく平均的な体重で、おそろしいほど平均的なバストサイズ。服は選び放題で、そのへんはまあ便利というか助かるというか、いいんだろうけど。
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