第1章 : 寄せ集めのボクラ

10/21

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
 仁羽の言葉に成島も同意するし、俺も勢いよくうなずいた。  そうなのだ。我らが担任・尾西先生は、何かと噂の絶えない人だ。  誰も正確な年齢を知らない(おばちゃんのはずだけどわりと若く見える)とか、水泳部顧問で嘘のように泳ぎが速いとか、自宅に広大な野菜畑を持ってるとか色々あるけど、一番有名なのは諦めが悪いというか諦めることを知らないって話だ。  夜遊びをして家に帰らない生徒を夜通し追いかけ回して観念させたとか、未提出物の王者の家までプリント回収しに行くだとか、学校なんて行ってられるか! と言って出て来ない生徒を毎日迎えに行ったとか。  噂じゃなくて事実なのがオソロシイ。 「尾西せんせーはねー、ホントに毎日提出しろって家まで来るし、電話もかけてくるんだって遠山が言ってたよ」  立ったまま寝そうな、未提出物の王者による実体験だ。  ちゃんと出さないと、本気で夏休みナシにしかねないのが尾西先生だということを、俺たちはよく知っている。だから選択肢なんてあってないようなものだ。 「でもきっと、あれは仁羽が壁新聞なんて無意味とか役に立たないとか言うから、せんせー怒ったんだよ。だから居残りなんじゃないのかなぁ」
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加