第5章 : call your name

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 努力はした。壁際に追い詰められた俺は、目の前に立ちふさがる三人に、必死に訴えた。  一階の窓からでもいいじゃん(サイズ的に無理だと却下)、怪我人の遠山に無理をさせたら駄目だと思う(本人に大丈夫だと言われた)、もういっそ学校で一晩明かそう(仁羽に呪い殺されそうだった)とか、それはもう色々。 「大体、お前は何が嫌なんだ。危ないからか? 高いからか? 木登りしたことねえのか?」  イライラし始めたらしい仁羽が荒い口調で言う。突き刺す言葉と向けられる視線の強さに、何も考えないでほとんど無意識で答えた。 「た、高いから……」  もっと危ないことだってやってるし、木登りなんて一時期までアホのようにやってた。何が嫌かって、そりゃ高い所に立つことだ。 「……っていうか……俺はいいから……明日まで待つから、ほんとカンベンしてください……」  ずるずると廊下に座り込む。高い所は嫌いだ。木の上なんてもっと嫌だ。落ちるのも痛いのも嫌だけど、それより思い出す。思い出したくない。心臓の音が聞こえる。  この三人のことだから、さっさと下に行くだろう。誰かに知らせるくらいはしてくれると思うから、待ってれば誰か迎えに来てくれるだろう。それまで待てばいいんだ。そう思っていたら、遠山がつぶやいた。 「……園田は、なんで高い所嫌いなの……?」 「……小学校の時に……木から落ちて骨折したからだと思う……けど……」
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