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廊下に座り込んだままで、「無理だって」と言うけど、三人はまるで聞く耳を持たない。
目の前でしゃがんでいる成島も、だるそうに立っている遠山も、真っすぐ立っている仁羽も。俺が一緒に行くのは当たり前らしく、強制的に連れて行く話をしている。俺は無理やり唇を引き剥がして、どうにか声を絞り出す。
「俺の、ことは諦めてくれて、いいんだけど……」
最悪学校で一晩明かせばいいんだ。思って言うけど、成島が「だめ!」と言い切る。遠山が「諦めるの、諦めて……」とささやき、「一人だけ逃げられると思うな」と言うのは仁羽だった。
三人とも考えを曲げる気はないらしく、このままだと無理やり連れて行かれそうだ。
思ったら、ふつり、と落ちた日のことが頭をよぎる。
心臓が飛び出してしまいそうで、汗が噴き出すのがわかる。嫌だ。筋肉が強張る。少し思い出しただけで、こんなにすくんでしまうのだ。無事に下りられるわけない。
「俺、絶対、時間かかる。ちゃんと、すぐ、下りられない」
途中で、動けなくなっちゃうかも、て言ったって、三人ともそれがどうしたのか、なんて顔をしている。当たり前みたいな顔をしてるのは、きっとわかってないからだ。
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