第1章 : 寄せ集めのボクラ

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 カメラとかは使えるからこっそり持って来てる人が多いけど、外部との接続は一切出来ない。連絡さえ取れれば、こんな状況すぐ終わるのに。 「あ! 部活やってるかも!」  ぱん、と両手を打った成島がぱたぱたと校庭側の窓まで走っていく。勢いよく開け放ち、外へ顔を出す。  つられるように俺も視線を動かせば、まだ明るさを残している空が目に入る。ただ、空の端は夜に向かっているみたいだ。  窓枠の下から突き出すように見えるのは、校庭を取り囲むフェンスとその向こうに広がる森だ。  隙間なく並んだ木々は随分と暗く見えた。一本ずつの形はよくわからなくて、影の塊みたいだった。影絵のように、シルエットだけが連なっている。 「誰もいないねぇ」  校庭をぐるりと見渡した成島は、淡々と言う。落胆している素振りも、不思議そうな響きもなく、ただ事実だけを伝える口調だった。 「全然人がいないよ。部活もやってないし、練習してる人とか、遊んでる人とか、どこにもいないみたい。お祭り行っちゃったのかな」  言った成島は、少しだけ口をつぐんでから、ぽつりとつぶやく。 「よく聞こえるねぇ」という言葉に耳をすませば、お囃子が聞こえてくる。笛の音、太鼓、鈴のおと。かすかに響いて気がはやる。
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