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わあ、と両手を挙げた成島がぴょんぴょんと飛び跳ねる。俺は幹に手を置いたままで、最後の枝に立っている。
「……いらっしゃい?」
ぼんやりと、だけどほのかに笑みを乗せた遠山も近づいてくる。幹に手を添えつつ注意深くしゃがみこむと、二人の顔がよく見えた。
今まで押し寄せるようだった葉っぱが突然なくなって、空間が広がった気がする。いきなり放り出されたみたいで少し頼りない。
だけど、大丈夫だ。地面はもうこんなに近い。夜に沈んでいるけれど、ここにある。
このまま地面まで下りてしまおうと、枝を掴みながら幹に足をかけ、下を目指す。しかし。
「っぎゃあ!」
かけたはずの足がつるりと滑り、あっという間に地面まで引っ張られる。
上手く着地も出来ず、尻もちをつく羽目になる。頭まで痛みが貫き、一瞬息も出来なくなり、ゴホゴホせきこみながら、周りを見た。
同じくらいの目線には茂み。てのひらをついているのは、地面。少し顔を上げたら、足。
上を見たら目を開いて俺を見下ろす、成島と遠山が立っていた。俺は少しだけ考えたあと、ブイサインつきで言った。
「園田義人、到着」
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