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真っ先に反応してくれたのは成島。ぱっと笑みを広げて、いらっしゃい! とか言っている。
「……待ちくたびれたよ……?」
あくびを挟んでからそう言った遠山だけど、目元は薄ら笑っているような気がした。気恥ずかしいような、浮かれるような不思議な気分で、へへへ、と笑みを浮かべて二人を見る。
成島が何か言おうとしたみたいだけど、その前に盛大に頭上の枝が揺れる。
音の方向を見たら、さっき俺が立っていた枝に仁羽が立っていた。頭は葉っぱの中だから足しか見えない。
仁羽はためらいもしないで、当たり前の動作の続きみたいに枝から飛び下りる。そうして、何てことない顔をして、すとん、と俺の隣に着地した。
「わあ、仁羽もいらっしゃーい!」
にっこにっこ、それはもう楽しそうに成島が仁羽を出迎える。遠山も仁羽に向けて「変な物見なかったみたいだね……」と気遣うようにも聞こえる台詞を口にしているけど、やたら楽しそうだ。
「まあな。……園田、鞄」
仁羽は短く答えると、上で預かってくれてた鞄を投げてよこした。ああそういえば、持っててくれてたんだっけ。おかげで荷物を気にしなくて済んだわけで、ありがたい。
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