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視線を上に向けると、仁羽と遠山と成島が何やら話しこんでいる。これからの話をしているのかもしれないし、案外くだらない話をしているのかもしれない。
きっと、俺の所為で随分時間はかかったのに、そんなこと一言も言わない。当然みたいにしてくれている。
座り込んだままでぼけっと三人を見ていた。今さら疲れがやって来たみたいで、頭がぼんやりしている。だからだと思う。
「いつまで座ってんだよ」と、仁羽がぶっきらぼうに言うと成島と遠山もこっちを見る。「行こう」って成島が笑う。遠山も口元を上に引き結んでうながすみたいだ。
迷惑だったろうに、俺がいなかったらきっともっと上手く、簡単に済んだのに。
「……ありがとう」
もやがかかったような頭は、勝手に唇から言葉を落とした。にじんでいるのは、頭なのか視界なのかわからない。ただ素直に、思ったことが転げ落ちる。
「俺のこと、置いてったら楽だったよな。駄々こねて迷惑かけたのに、置いていかないでくれて、待っててくれて、ありがとう」
ちょっとひどいと思ったけど。強引過ぎて人の話聞かないで嫌だっつってんのに強制参加だし、マジでこいつら人でなしか! って思ったけど。
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