第5章 : call your name

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 ゆっくりと立ち上がってから、ポケットに手を突っ込む。丁重に取り出し、両手で返した。  ぴんく色の……糸か何かで編まれた人形。小さいけど、きっと成島は何度も握りしめて祈った。俺もちょっと祈った。成島はメノウ様を、そっと両手で受け取った。 「……最後はちょっと尻もちついちゃったけど、中々効果あったでしょ?」  へへ、と照れたように笑う。最後のはまあ、置いておくとしても無事に着いたし、効果はあったと思う。だから「メノウ様のおかげで無事でした」と言ったら、馬鹿にした感じで仁羽が言う。 「……どうせ最後は園田の不注意が原因だろ」  そりゃもう凶悪な顔をしているかと思ったけど、小さく笑っているから。  俺もおどけて「どうせそうですよー。でも無事だったのでメノウ様効果はバッチリです、すごいんです」って答えたら、成島がとろけるみたいに笑った。  それを認めてから、「……えーと……それじゃ、行く?」と声をかける。  せっかく脱出も出来たんだし、と話題を変えると成島は「そうだね!」と力強く笑った。仁羽も、とりあえず校舎から出てきたことで落ち着いてきたのか、おだやかな声でつぶやく。 「ここから一番近いのは……東門か?」
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