第5章 : call your name

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 うちの学校には、東西南北四つの門がある。南門が正門で昇降口に一番近いけど、現在地からだと校舎を挟んだ反対側だ。校舎と校庭と並行に、東へ進むと東門がある。 「……そだね。東と南からしか帰れないからなー」  ぐるり、と木立の間から校庭を見渡す。校庭を突っ切った先にあるのは北門だけど、出た所で大通りにつながってないから遠回りだし、ここを突っ切るよりは東門の方が断然近い。 「……まあ……距離的に……一番近いのは、西門だけどね……?」  ぼんやりと遠山がつぶやいた。言っていることは間違ってないけど、西門も北門と同じく道は小さいし、いちいち大通りまで出る距離を考えると遠いので帰り道には入れてない。  仁羽も同じ回答らしく、「じゃあ東門だな」と言って話を終わらせようとしたのだけれど。 「西門と北門って、あんまり意味ないよねぇ?」  成島がはきはきと質問を投げかける。確かに、二つの門を出た所で、あるのは森だか雑木林だか、だ。そのまま進んでも山奥に入るだけなので、あんまり意味はない。     
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