第6章 : そしてボクラは共に笑った

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「だろうなー……。どうせ山の中に学校あるんだし、もう少し近く通ってくれたらいいのに」  そしたら気分は味わえるのに、とこぼす。水上神社までだって近くないし、神輿が通る国道も森越えないと行けないし。全然かすらないので、お祭りやってるはずなのにほとんど気分が出ない。 「……神輿のルートは……昔から……ずっと……学校の近く、通らないよ……」 「そうなの?」  反射的に聞き返せば、遠山がこくりとうなずいた。ふわふわと、気泡のように吐き出された言葉をつなぎ合わせると、祭りが始まった時から、学校から遠いルートを通っていたらしい。  伝統の一部ということで、簡単に変わることもないだろう、と言う。純粋に「なんでまた」と思ったので聞いてみたら、遠山はあっさり答える。 「ここが……人の敷地じゃなかったから……」  人間の里まで神様を連れて行くにも帰るにしても、通るのは人の道だけだ。だけれど、この山の大半は人のものじゃなかった。  人間の道を通ろうとしたら、必然的に迂回ルートになってしまって、今もそれが続いているわけで、それはつまりうちの学校がある場所は人間の領域ではなかったわけで……。
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