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考え込みかけたら、遠山が「まあ……学校が出来る前はね……」とつぶやく。
横では、仁羽がものすごい目をして「どうせ墓場だろ、俺を怖がらせて何が楽しい?」と、胸倉をつかみかからんばかりで言う。しかし、遠山は気にせずのったり答えた。
「安心していいよ……墓場じゃなくて……人じゃないものの……村だったらしいから……」
それは安心材料なのか。
と思ったのは仁羽も同じだった。「ただの怪談じゃねえか!」と憤る。
遠山は「怪談でもいいじゃない……」とか言うけど、仁羽に取ったらいいわけがない。もっとも成島は「夏だもんね!」と笑顔だった。
「夜も更けてるし……丁度いいんじゃない……?」
薄い笑顔で言えば、仁羽が憤然と「絶対認めねえ!」と息巻く。遠山は別にハナから怪談する気ではなかったらしく、特に反論はしないで肩をすくめるだけだった。
だけど、俺はその言葉に考えたくないことを思い出してしまって首を振る。駄目だ、時間とか絶対確認したくない。絶対にやばい。
「すっかり夜だもんねぇ」
しみじみとした調子で夜空を見上げる成島の言葉に、背筋が冷える。一体今何時なんだろう。
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