第1章 : 寄せ集めのボクラ

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 あまりにもスラスラと出てくるので、まじまじと仁羽を見つめてしまった。どんな記憶力してんの。  成島はそうなんだーと言って、パチパチ手を叩く。すごいけど、あれこれ常識なのかな。遠山も知ってたし。あ、でも遠山は小学校の時、神輿の先頭歩く露払いやってたからかも。 「僕ねー、あれは覚えてたんだけど。んーと、自分と似た河童がいるやつ」 「……鏡池の……水鏡伝説だね………」  答えたのは遠山で、成島がそう! とうなずいた。もう一人僕がいたらいいなって思ってたんだよ、と言ってにっこり笑った。 「……祭りの日は……あっちも祭りをやってるらしいから……出て来やすいらしいよ……」  だから会えるかもね、とぼんやりした声で言うと成島が嬉しそうにやった! とか言っている。  あれ、でもこれって喜んでいいんだっけ。会ったらあっちに引きずりこまれるとかそういうんじゃなかったっけ……と思ってたけど、遠山は無表情ながら淡々と伝説を話している。  聞いている成島も楽しそうだし、内容はホラーなのに、二人を見ていると単なる世間話をしているようにしか見えない。 「体育館にも誰もいねえ。真っ暗だ」  突然声が飛び込んだ、と思ったらいつの間にかいなくなっていた仁羽だった。向かい側の窓を見てきたらしい。  射殺すような目つきで、体育館はもちろん、自転車置き場とか正門前広場とか、見える範囲ではどこにも人はいなかったと告げる。残るのはこの校舎内だけ、だけれど。 「鍵が閉まってるとなると、帰った可能性の方が高いな……閉じ込めたことも知らねえで」  仁羽が重々しく吐き出した言葉に、俺も同意を返す。  水上神社のお祭りは、先生たち総出で見回りをしているはずだ。毎年全員漏れなく駆り出されるし、早々に学校を出ていると思う。  つまり、校舎内にいる人に助けてもらえる可能性は低い。外にいる人が気づいてくれたらいいんだけど、それはかなり怪しい。 「電気もつかないのにねー」  その通り、と成島の言葉にうなずく。点検とかで、放課後から明日いっぱい学校の電気がつかなくなる。夏休みだし、室内の部活は明るい内の活動だから、問題はない。  ただ、今の俺たちには思いっきり問題だった。電気がつけば誰かに気づいてもらえる可能性が格段に上がるのに。
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