第6章 : そしてボクラは共に笑った

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 だから、馬鹿みたいでも俺を見てくれって頑張っちゃうよ。  なるべく軽くそう言ったら、ふわふわした笑い声が返ってきた。それは遠山からじゃなくて、メノウ様を握りしめた成島だった。 「そうやって、諦めないで頑張っちゃうのが園田のすごい所だよねぇ?」  問いかけられたメノウ様は、成島の手の中でこくこくとうなずいた。成島は、月の光の下で、それでも太陽の匂いのする笑顔を浮かべる。重さを感じさせず、ただやさしく降り積もるみたいな笑み。 「僕も見習わなくちゃ。お姉ちゃんにいつか会えるの、諦めちゃだめだね」  たぶん日本にいると思うし、日本じゃなくたって地球上にはいると思うんだよね! と朗らかに言うけれど。  それが安心材料になっている所が成島だと思う。地球上って、範囲広すぎるから! めげるから! 「……世界何周する気だよ」  呆れ顔で言ったのは仁羽だけど、遠山はむしろ納得している。地球外にいるわけじゃないし、どうにかなるんじゃないの……と言う顔が本気だ。 「メノウ様もいるしね……?」 「でしょ! メノウ様がいたら、きっといつか会えると思うんだよね!」  きらきら、と目を輝かせて遠山の言葉に同意する。ううむ、メノウ様の管轄が本気でわからない。わからないが、確かにメノウ様なら出来そうって気はする。 「メノウ様はねぇ、すごいんだよー」  心底楽しそうに語り出すのはメノウ様の逸話の数々。  噂話で聞く度うさんくさいと思ってたのに、本人が話しているとやけに説得力がある。何回も聞いていると、メノウ様なら、奇跡だって起こせるかも、なんて思わせてしまうのだ。だから、つい感想が漏れた。 「……さすが成島」  どんな迷いもなくきっぱり言い切る様子に、つい言葉がこぼれる。小さな声だったけど、拾ったのは仁羽だった。 「まあ、面白いヤツではある」と、何でもないような顔をして、それでいて唇にほのかな笑みを刻んで言う。 「仁羽の方が面白いよ……?」  仁羽の言葉を聞きつけた遠山が真顔で言えば、言われた本人は心外そうに、「お前の方がよっぽど奇天烈だろ」とか言い返す。  口論めいたものになりかけるので、口を挟もうと思ったけど、成島はそんなことまったく気にしなかった。 「四人一緒が、一番面白いって。メノウ様が言ってるよ」
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