第6章 : そしてボクラは共に笑った

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 成島がぽつりとつぶやく。仁羽の言いたいことは大体わかっているのだろう。お囃子が届くなら、聞こえたはずのもの。遠山も成島も、居心地の悪そうな顔をしている。 「神輿行列って帰ってくる時、何があるんだっけ?」 「……お囃子と鳴物と、パレード……?」  考え込みながら、成島の疑問に答えるのは遠山だ。補足するように仁羽が続ける。 「祭囃子は太鼓・笛・鉦。あと鳴物は銅鑼とか木魚とか、もっとでかい太鼓。ついでにパレードに至ってはトランペットやらドラムやらだよ」  すぐまぶたの裏に思い浮かぶのは、去年見た風景だ。階段を騒々しく登っていく姿。音が近づくとそれだけでわくわくした、たくさんの楽器の音。うるさいくらいに響いていた。 「……神輿って帰る時、すげえあおるんだよな。周りの人もわあわあ声出して、騒げば騒ぐほどいいんだって、腹の底から声出すよ。だから、近くにいると耳鳴りみたいになんの」  目眩がするほどの音の洪水だ。頭が割れるような、圧倒されるほどの楽器、人の声、音の嵐。うるさいくらい鳴り響くのだと、知っている。直に見たことがなくたって、町中にいればきっとどこかで耳にしている。     
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