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自分なりの結論を下したらしい仁羽は、立ち上がると言った。俺たちも、あんまり深く考えない方がいい気がしたので、それ以上は突っ込まない。制服を叩き、東門を振り仰いだ仁羽はつぶやく。
「……登るのか、これ」
登れるのか、という声だった。門は鉄の柵みたいになっている。すき間は細いから人間は通れないし、登るとしても足をかける場所がないのだ。
しかもやたら高くて身長の遥か上。開いている時は何とも思わなかったけど、閉まっていると威圧感がある。
「あ、それは平気!」
軽いバネで成島は立ち上がり、門のそばの木をぺしぺし叩いた。
ずんぐりとして重量感のある木は、あちこちに枝を伸ばしている。その内の一本は、門の外まで張り出していた。あ、嫌な予感……。
「これ登れば超えられるよ」
にこっという笑顔に、またか! と叫びそうになる。また高い所か。
成島は俺の表情に気づいたらしく、「さっきより全然低いよー」と笑った。
……そうなんだけど、そういう問題じゃなくて……。そりゃさっきよりは登れるかなって気がするけど、あんまり進んで登りたくない。
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