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遠山も無言でうなずいているし、同じ考えに行き着いたのかもしれない。けれど、仁羽だけが「はあ!? 何だそれ」と素っ頓狂な声をあげた。鋭い目で聞かれる。
「……聞いてねえぞそれ。いつ言ってた?」
「あー……。……今日の朝。出席取ったあと」
だよな、と目で確認すると二人がうなずいた。仁羽は俺の返答に数秒考え込んでいたけれど、ぽつりとつぶやく。
「……騒ぎのあとか……?」
言われて今朝の風景を思い出す。
明日から夏休みというわけで、ちょっと教室は浮き足立っていた。それは毎年のことだけど、今年はより浮かれまくったのが数人出没していた。
そいつらは、「教室にいたんじゃ、祭りに参加出来ない!」「せめて音だけでも祭りの雰囲気を味わいたい!」と言って教室を脱走。
校舎内じゃ神輿のパレードさえ聞こえないから、神輿の通る国道まで行こうとして捕まる、という騒ぎが起きていた。
うちの学年だったから先生たちみんないなくなった。で、帰ってきてから朝の連絡事項で言ってたから……。
「あーそうそう、あの騒ぎのあとだ」
「っつーことは俺が資料取りに行ってる時じゃねえか!」
仁羽が吠えた。
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