82人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
そういえば先生が、いなくなる前に夏休みの資料を持ってきておくように、と前の席の数人に指示を出していた。仁羽の席は扉側の一番前だ。
もっとも、意外と早く捕まったので、仁羽たちより先生の方が早かった。その間に伝えたらしい。
口々に同意を示すと、仁羽が無表情に黙り込む。
それから、地面の底からふつふつとわきあがるマグマのように笑い出した。視線だけで人が殺せそうだ。今なら眼鏡からビームも出せると思う。最後には大魔王のようなほほえみで、あのババアッと毒づいていた。
あまりにも声の調子が本気だったので、俺はただびくびくしながらそれを聞いているしか出来ない。
一体どうしてそこまで怒っているのかはわからないけど、真剣に呪いの言葉(たぶん)を延々吐いていることだけはわかる。
先生の説教にも負けないレベルでひたすらぶつくさ言っていて、途切れる気配がない。どうすればいいんだ、としばらく戸惑っていたけど、他の二人は全く気にしていない。
遠山は寝そうだし、成島は呑気に窓の外を見ている。それぞれが好き勝手に過ごしていて、会話があるわけじゃない。そうやって黙っているのが真っ先に辛くなるのは、大体俺だ。
「……えーと、どうしようか」
最初のコメントを投稿しよう!