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つぶやきのような声だったけど、成島の耳にはちゃんと届いたらしい。
きちんと拾ってくれて、「……んー、今何時だろうねぇ……」と、天井に近い位置にある壁時計へ目をやる。
俺も視線を向けるけど、気づけば外は随分暗くなっていて、時計を読むのも一苦労する。
「……七時くらいかな?」
形から見て大体それくらいらしい、と俺もうなずく。ぼんやりと形は読み取れるし、完全な暗闇じゃなくてよかったな、と思ったけど、時間を確認したらヒヤリ、とする。
七時か……まだ行けるかな、怒られるかな。いくら祭りって言ってもあんまり遅いとマズイかも……。
ちょっと考え込んでいたら、いつの間にか先生への呪いを止めていた仁羽が言った。
「――お前ら、携帯かスマホ持ってねえのか?」
思いついた、みたいな響きをしているから、ハテナ、と首をかしげた。連絡取れないのに、なんで必要なんだろう。記念写真撮ろうってキャラでもないしな、仁羽。
俺の感想を読み取ったのか、仁羽は苛立ちながら言葉をつなぐ。
「最悪明かりになるだろうが。完全な暗闇よりマシだ」
仁羽が学校指定の鞄を探りながら携帯電話を取り出し、そっけなく言う。成島はズボンのポケットから、遠山は鞄からスマホを取り出す。俺は持ってきてない。
「遠山のスマホ、すごい色だねぇ」
つくづく感心した風につぶやいたのは成島だ。確かに、遠山のスマホは蛍光塗料みたいなどぎついピンク色で予想外だった。遠山のイメージ的には、もっとシンプルな色を選びそうだったんだけど。
「こういう色好きなんだな」
意外な一面というヤツだ、と思いつつ言うと首をひねりながら「いや……別に……。好きっていうよりは……苦手……?」と答えた。
どうしてわざわざ苦手な色を選ぶんだ。謎すぎるだろ。……と思っていたら成島が言った。
「園田は持って来てないんだね」
何か意外だねぇ、という言葉に、俺は曖昧に笑った。
「別に学校にいれば大体のヤツとは会えるからさ。会った方が早いじゃん」とすらすら言えば、成島は「それもそうだね」とうなずいた。
それ以上は興味がないのか何も聞かれなかったので、胸を撫で下ろす。
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