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お礼を言って、戻ってきた紙を両手で受け取る。
三人分のアドレスと、電話番号。
真ん中の小さい文字が成島で、その上の細長くて角ばってるのが仁羽、余白はまだあるのに、一番下のぎりぎりに、細かく書いてあるのが遠山だ。
紙を目の前にかざすようにして、アドレスを眺めている。俺が言う前に、教えてもらった。聞くより早く、教えてくれた。
思わず笑ってしまった。それはいつもの、茶化すような顔じゃないってことは自分でもわかったから、急いで別の言葉をつけくわえる。
「……仁羽の誕生日って十一月二十七日なんだな。アドレスに入れとくとバレるぞー」
誕生日なんて前から知ってるけど、今気づいたみたいな得意そうな顔で仁羽を見た。これならからかうみたいに聞こえるだろう。
仁羽は俺の言葉に鼻を鳴らし、本当にどうでもよさそうに「別にいいんだよ、俺のアドレス知ってるやつなんて、親戚しかいねえから」と言い切る。
とっさに何を言えばいいかわからなくて黙ると、特に気にすることもなく、言葉を続ける。
「じゃあソレが懐中電灯の代わりになるんだからな」
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