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まとめるように仁羽が言うと、遠山が「懐中電灯……」とつぶやいて、首をひねる。何なのかと三人で眺めていると、しばらくしてぽんと手を打った。
「確か……。準備室の……棚の中に……懐中電灯あった気がする……」
その言葉に、俺たちはざわめいた。暗闇がじわじわ迫ってくる中、懐中電灯があるのは心強い。
「よく知ってるねー、遠山!」
「俺だってそうそう入らねえぞ、準備室なんて」
「あ、もしかして常連? だから入るとか?」
「……よく延滞するから、準備室で叱られるだけ……」
そっちの常習者か。
遠山は重そうな動作で何かしらうなずいている。自分の役目は終えたといわんばかりで、その内眠ってしまいそうだ。ありえる。
「……えーと……こういう事情なら、借りてっても平気だよね」
成島がとりなすように言い、歩き出す。
俺たちも続いて、図書室と準備室をつなぐ扉に手をかけた。難なく開いて、安堵の息を吐く。
カーテンが閉まっている所為で、ほとんど光が入らない。机にぶつかりながら手探りで壁ぎわの棚をあさると、明かりの点く懐中電灯を二本見つけた。
壁に浮かぶしっかりした光を見ていると落ち着ける。外から降りそそぐ月の光や、心細い外灯より、手元にある明かりの方が信用出来る気がした。
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