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「えー。でもメノウ様いるし」
「メノウ様どんなご利益あんの?」
ロッククライミングに効果ある神様って何だ、交通安全的なやつか。メノウ様の加護分野どうなってんの。ついついそんなことを考えたけど、はたと我に返った。
「いや、いくらご利益あったとしても無理だ。忍者じゃないんだから死ぬ!」
そんなアクロバットやらされるくらいなら、今のこの状況の方がはるかにマシだ、と思わず語気が荒くなる。
ただ、成島はぼんやり「忍者かぁー。憧れちゃうねぇ」とつぶやいてるし、その顔は完全に忍者をたたえる方向性だった。
「こういう夜には……忍者が合うね……」
思いがけず遠山も加わり、窓越しに空を見上げている。しかも、「月をバックに飛ぶ忍者っていいと思うなぁ!」と成島が言い出せば、遠山も「同感……」なんて言っている。
あれ、何かこの二人話が合ってる……同じ空気を感じる……。
お囃子をかすかに聞きつつ、成島と遠山の話を聞くともなしに聞いているのだけど。てんでばらばらの方向に進んでいく話は、着地点が全く見えない。
というか、どうやってつながっているのかも謎だ。二人の会話は、ボケしかいない漫才みたいだった。俺だけじゃ突っ込みきれるわけがない。
「……仁羽!」
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