第2章 : 暗闇と秘密の行進

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 普段は全然気にしてなくて、月の光なんてあってもないようなものだった。  だけど光が手元の懐中電灯と、精々外灯しかない今の状況だと、月の光も充分ありがたい。弱々しくも思えるけど、それを見ると何となく休まる気がした。  成島は俺の返答にでしょー、と笑った。けれど仁羽は、青白い顔で気味悪い、と答える。遠山が無表情でうなずく。 「大体月は陰気なんだよ。ローマ神話に出てくる、月の女神ルナってのが語源になってるlunaticなんて単語は、精神異常とか狂人って意味なんだからな」  例えがいちいちインテリなのが仁羽らしい。遠山は、仁羽の言葉を受けるように淡々と言った。 「それに……狼男だって、月を見ると変身しちゃうし……。おかしくさせる作用があるよね……」  眠そうにしている目がわずかに開かれて、きゅっと下がった。どうやら笑顔のようだけど、楽しげには見えない。青白い顔の所為かやたらと薄暗く見える。  遠山の笑顔なんてレアのはずだけど、邪悪すぎてあんまり嬉しくない。 「うーん……そうなのかなあ……」  成島が納得しきれない顔で唇を尖らせて、水道の上にある窓へ目を向ける。静かな調子で言った。 「お月さま見てるとしみじみするけどなぁ。生き別れのお姉ちゃん思い出すし……」
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