第2章 : 暗闇と秘密の行進

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 そこまで成島が言った所で、はたと気づく。図書室で仁羽が、電気が点かなくなることを知らされていなくてあれだけ怒っていた理由に。  そりゃあ、電気の点かない夜の学校なんてとんでもないだろう。怖がりの人間には特に。 「……じゃあ、仁羽は大変だったんだねぇ」 「心理的にも苦痛はかなりのものだっただろうね……」  口調は同情的だが、まったく労わる気持ちがないことは見て取れる。何せ、「仁羽の気持ちには全然気づかなかったなぁ。ごめんねぇ」と言う成島は満面の笑みだし、「うん……わかってあげられなかったよ……」と続く遠山は死んだような目をしている。真実味が欠片もない。  仁羽は呪い殺しそうな顔をしてたけど、二人の台詞を一通り聞いたあと、長く息を吐いた。ため息なのか、何かを諦めたのか、覚悟でもしたのか。わからないけど、息を吐くと顔をあげて言った。 「……そうだ。俺はここにいるのが怖いんだよ。だから、こんな絶好の心霊スポットさっさと出るぞ」  どうやら開き直ることにしたらしい。それはとても仁羽らしくて、何だか愉快な気持ちになる。今度こそ気づかれないようにこっそりと、だけど確かに、俺の唇は小さく笑みの形をしていた。
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