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それから俺たちは仁羽がトイレを済ませるのを待って、階段を下りた。
先頭を歩く成島の足取りは軽くて、テンポよく階段を下りて行く。最後尾の遠山はてろてろ歩いていて、仁羽と並んで歩く俺との間に、少し距離が出来ている。
三階に用はないからそのまま二階へ行こうとしたら、踊り場を通り越した辺りで成島が立ち止まり、声をかける。
「ねぇ、ちょっといい?」
振り返って俺たちを見る成島は、メノウ様を持っていた。そのまま笑いかけてくる姿には妙な威圧感がある。
足を止めて成島を見ると、遠山が追いついたのを確認してから、ぽつりと言った。メノウ様を胸元で握りしめて、首をかしげた体勢で。
「ちょっとね、美術室まで行きたいんだ。忘れ物しちゃったから」
ああ、と俺は納得したけど、他二人は不思議そうだった。美術の授業は現在教室でやってるから、美術室になぜ忘れ物をするのか、という意味だろう。仁羽が尋ねれば、成島はあっさり答えた。
「え。だって僕美術部だもん」
「成島……お前、部活なんてやってたのか?」
「幽霊部員……?」
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