第2章 : 暗闇と秘密の行進

17/26

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
 仁羽と遠山の反応に、成島は「失礼だなぁ、ちゃんと活動してるよー」とむくれた。確かに、成島が部活やってる姿を上手く想像出来ないのはわかる。  強制加入じゃないから、入ってない生徒の方が多いだけになおさら。俺も入ってないし、遠山も仁羽も無所属のはずだ。 「……何忘れたんだよ」  仁羽が低い声で尋ねる。トイレの件(出て行くな、というお願い)がある所為なのか、一応聞くだけ聞くつもりらしく、一刀両断にはしない。しかし。 「え。戸川美保の写真集」  華やかな笑顔で言うと、仁羽がキレた。瞬時に間合いを詰め、成島の胸倉をつかむ。そして、地獄の底からわきあがるような声で言った。 「お、ま、え、は……っ! 何だ、戸川美保に何の義理があるんだ? こんな状況で写真集取りに行くくらいだからな、借りでもあるのか? 金でも借りてんのか?」  ふ、ふ、と笑みらしきものが聞こえ始め、殴りかからんばかりだったので、仁羽を後ろから捕獲した。成島は特に気にすることもなく、明るく言った。 「借りなんてあるわけないでしょ。面識だってないしー」  そりゃあ、仁羽だって本気で知り合いだと思って言ったわけではないだろう。仁羽が殴らせろ、と言う。羽交い絞めにしつつ別の方向に気を向かせよう、と早口でまくし立てた。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加